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『君たち キウイ・パパイア・マンゴーだね。』 中原めいこ ~ひとかけらのお歌詞~ [ひとかけらのお歌詞]

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      君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。
              (歌・作詞・作曲/中原めいこ)


        君たち キウイ・パパイア・マンゴーだね             
                (中略)                  
        咲かせましょうか 果実大恋愛
                 (フルーツスキャンダル)

『学生街の喫茶店』のあとにコレか!?とお嘆きの貴兄も多いと思うが、まあ脱力しないで読んで
いただきたし。

これ、私が高校を卒業したばかりの初夏の 中原めいこ のヒット曲である。
その頃は、今以上に国内の化粧品メーカー各社があからさまに競い合って、四半期ごとに季節
先取りの新製品のキャンペーンをテレビCMで大々的に打ち出しており、それには必ずタイアップ
のJ-POP (ってその時は呼ばなかったが)ソングがセットになっていた。

夏モノの化粧品(日焼け対策モノや原色系、パール系のアイシャドウやら口紅やら)は、5月に入る
と同時ぐらいに各社が一斉にCMを打ち始める。
この曲もまさにそれ。この年の夏商戦は、まさに資生堂とカネボウの一騎打ちで、資生堂は
「SUN’s」 というサンタンローションを中心としたシリーズで、よく知らない褐色の肌のラテン系の
美人モデルがキャンペーンガールをやっていた。タイアップソングは大沢誉志幸の 『その気×××』(「その気ミステイク」 と読ませる)。

この曲が、浜辺をビキニを着た小麦色のガイジン女がモンローウォークで歩く映像とゾクゾクする
ほどマッチしていてクールでカッコ良く、私は一発で大沢誉志幸のファンになり、レコードを借りに
友&愛(貸しレコード屋)にひた走ったし、そしてまた海に行く予定も特にないのに、SUN’sのサン
オイルとファンデーションのセットを買い込んだりした。メーカー側から見れば、ネギをしょって
自分から鍋に入っていくカモぐらいウハウハなミーハー消費者であった。で、やっと本題に入るが、一方のカネボウは、栗原景子 という当時雑誌Non・noの専属で、
丸顔でキュートな顔立ちとスレンダーな肢体で女の子の間で大人気だったモデルがキャンギャルに
抜擢された。


かろうじて見つけたこのCMのポスター

あ、こんなスゴイのも発見!
栗原景子.jpg

やはり資生堂と同様、日焼け対応のファンデーションシリーズのCMで、色々なフルーツを入れた
竹カゴを頭に載せて栗原景子が腰にパレオを巻いたビキニ姿で明るく海辺の通りを歩くようなCM
だったが、このタイアップソングがこの 『君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。』 だった。

最初、サビのメロディに乗せて歌詞が耳に入ってきた時は特になんとも思わなかったのだが、この
曲がヒットしだして、改めてタイトル名や歌詞を字づらで追ってみると「"君たちキウイ・パパイア・
マンゴーだね"ぇぇ???何だそりゃぁ?」と、かなり奇異に感じたものである。

 ♪ドライなシェリ~ ちょっと誘われて~
  灼けつく恋の食前酒~(←アペリティフって読む)
 
 (これ以上は削除します。またJASRACに怒られますので)

まあ、描いているシチュエーションとしては、これより7、8年も前にヒットしたピンクレディーの
『渚のシンドバッド』 とほぼ同じで、プレイボーイ風な男と海辺で出会って、ひと夏(いや、一夜かも)
の恋に身をやつすっていう他愛ない世界なのだが、渚のシンドバッドとちょっとばかり違うのは
サビ部分の、かなりハジけ飛んだその歌詞である。

一体、「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。」とはどういう意味であろうか。

トロピカル・フルーツというものは原色で見慣れぬ奇抜な形をしていて、味もねっとりと度を超えて
甘く、どこかしら妖しい非日常感を漂わせている。しかも "パパイア" "マンゴー"・・・何というか
オト的に、危ない。猥雑な響き。背徳の香りだ!(まあ落ち着いて・・・)
かといって、あからさまなセクシー路線で「♪パパイアみたいなナンチャラを見て~」 とか
「♪マンゴーは私のナンチャラよ~」といったような、変に深読みしそうな妖しげな表現をしている
訳ではない。(書いてて恥ずかしーわ)あくまでピーカンに明るいのだ。

まあおそらく、この女子大生風情のチャラチャラした若い女の子に「マンゴーだね~♪」と、ちょっと
ギリギリ感を覚えさせる歌詞を大きな声で歌わせて、男たちをひそかに「ニヒヒ」と喜ばせる意図を
微量織り込みながらも、全体のテイストとしてはどこまでも元気に健康的に!という絶妙なバランス
感がこの曲の最大の魅力なのだろう。
そもそも、この3つのフルーツを受ける言葉が「貴方たち」でも「おまえたち」でもなく「君たち」
であることが重要で、これがこの曲のドライさ、クリーンさを決定的にしているのである。

一体いつ頃からなんだろう、女性歌手が二人称に「キミ」を使い出したのは?
おそらく今のJ-POPでは、若い女性シンガーが使う二人称は「キミ」のほうが主流だと思うが
(パッと思いつくだけでも、浜崎あゆみ、西野カナ・・・新しいところでは AKB48 などもほぼ
100%、二人称はキミ)

70年代までは完全に「あなた」だった。この曲が売れた80年代半ばあたりもまだまだ、あなたが
主流だったと思う。でもおそらくこの辺から社会における女性の台頭が目覚しくなってきて、大卒
女性の「総合職」なんていうものが出来たり、結婚してもいわゆる「寿退社」をせず仕事を続ける
ようなケースが多くなってきたりして、「アナタの帰りをずっと待ってるわ」なんて殊勝なことを
言って三歩後ろでうつむきがちに微笑んでいるような女性はどんどん減っていってしまった。

かといって、現実として男性に向かってあからさまに「キミキミ、ちょっと!」などと呼ぶ女性は
今もそうそう居ないわけだが、あくまでも「女性」の立ち位置を示す指針として、歌謡曲(J-POP)
の世界では、異性の相手を「あなた」と呼ぶのは従属の、そして「キミ」と呼ぶのは「対等」の象徴
に他ならない。
そんな意味でも、「君たちパパイヤ・・・」と早い段階から夏の海に向かって言い放ったこの曲は
やはり強いインパクトがあった。

それにしても、君「たち」・・・。
なんで複数形なんだろう。一体 誰たち のことを言ってるのか。
「キウイ・パパイア・マンゴー」その果物の選択と配列は何だ。そしてどういう意味があるんだ。
で、しまいには「-だね。」 ・・・この断定および確認の接尾語は何だ。
しかも「モーニング娘。」じゃあるまいし当時では珍しい、あえて「。」を付けたタイトル。
いかにも戦略的だ。発想として、かなり新しい。カネボウの宣伝部と大手広告代理店とが度重なる
企画会議の末に打ち出した画期的アイディアだったかもしれない。
(この時代にすでに、つのだ☆ひろが、姓と名の間に☆マークを挿入していたとしたら、上記も
さほど画期的ではないが)

よくよく見るとこの歌詞、Aメロ・Bメロでは語り手はあくまでも「ナンパされた私」だが、サビに
来るといきなり視点が変わって、浜辺で浮かれてくっついたり離れたりしている男女を俯瞰図の
ように上から眺めている別の誰かに移っている感じがする。

「若者よ、ネットリした甘い果汁がしたたる南国フルーツのように、せいぜいチチクリ合ってなさい。
今だけよ、今だけ!」 という入道雲の間に隠れている真夏の女神の視点ではなかろうか。

それにしても「フルーツ・スキャンダル」を歌詞カードでは漢字で「果物大恋愛」なんて表現している
とは知らなかった。軽薄だ。ここまで軽薄を紙の上で言葉に出来る中原めいこはやっぱりすごい。

また実際、当時は明らかに "トロピカルブーム"という大きな流れもあって、あーだこーだ細かい
理屈をこねずとも、「何となくそんな南っぽいイメージ」というだけで充分にトレンド感や時代の
ムードを伝える事が出来たのだと思う。

これを遡ること4年ほど前に、『勝手にシンドバッド』 なんていうハチャメチャな歌詞の曲で、
衝撃デビューを飾ったサザンオールスターズに、旧態依然の往年の作詞家たちは「歌詞がきちんと
情景を描けていない。歌詞というものは俳句と一緒なのだ。意味が通らなくては成立しない」
とか言ってこぞって批判を浴びせていたものだが、この『君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね』
くらい、音感ありきだけで奇抜に飛びぬけてしまうと、当時の頭のかたい老人作詞家連中などは
白目をひんむいて、もう何も口をはさむ言葉をもたない、という感じだったのではないだろうか。

何にしろ、この曲が大ヒットした夏はまさに私も、まりも羊羹のようにプリプリと若さ弾ける10代
だった。
栗原景子がつけている同じファンデーションとサンオイルを塗りたくって、高校の同級生女子3人で
乱暴にカーブを曲がる京浜急行に延々揺られ、三浦海岸の浜辺で無意味に1日寝転がったりしていた。

あの海岸の音の割れるひどいスピーカーでもきっと定期的に流れていたであろう、中原めいこの
キンキンした乾いた歌声が妙に懐かしく感じる。
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